青の淵から

Jun 17
“私は対人関係の距離をうまくとることが出来ません。幼いときからそうで、まず人見知りというものをしませんでした。人見知りとは自分と他人を区別する能力で、親しい人になつき、見知らぬ人を用心するわけですが、その能力がなかなかうまく発達しなかったわけです。
無用心に他者に近づいては“変な子”と拒否されて傷つく。それで私はだんだん、どうも“他者”は私ではないらしいと気づき、“他者”とは何か考え始めるわけです。
他者には他者の都合がある。気持ちがある。こだわりが、価値観がある。そして、相手を理解すればするほど、私は“他者”という人間から遠ざかっていきました。
遠ざかると孤独になるので、やはり近づく。近づくと無防備になってまた傷つく。それで用心深くなる。ここが距離が取れないところで、無防備と用心深さの両極端をいったりきたりするのです。ブランコのように。”
萩尾望都『思い出を切りぬくとき』-あとがき 私と他者-